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連続小説

僕が養う

てきぱきと動くアコを横目に、僕はファンヒーターをソファと流し台の間辺りに運んだ。
多少通行の邪魔にはなるが、ここなら台所で料理や洗い物をする時にもソファでくつろいでいても、向きを少し変えるだけでいい。
このファンヒーター、安物というだけあって部屋全体を温めてくれる勢いはない。
だから、暖を取ろうと思ったら直接熱気が当たる位置に居なければいけないのだ。
今までは一人だったからこれでも事足りたのだが、これからは人数が増えるからもっとしっかりした暖房機器を買った方がいいかもしれない。
今思ったが、アコが台所に立っている場合僕が温まれないのだ。
いや、別にアコを無視して自分の方に向けてもいい。
でもただソファでだらだらしているだけの僕が温まって、家事をしてくれているアコに寒い思いをさせるのは、人でなしにも程があると思うのだ。


「こたつを買うのもいいかもなぁ」


夢中でテレビを観ている宇宙人を見て、僕は思った。
これまでは家に居るよりも職場に居る時間の方が長かったし、なによりこたつがあるとただでさえ面倒くさがりで片付けられない自分が増々だめ人間になる様な気がして、買わなかったのだ。
実家のこたつに入っている時の僕はそれはもう、自堕落極まりなくひどいものである。
でも今はアコが色々と身の回りのことをしてくれるし、彼女の目があるからそれほどひどいことにはならないだろう。
それに、こたつは他の暖房器具より安く済むって言うし。
これからは出費も抑えていかなければいけない。
僕一人の稼ぎで2人養わなければいけないのだ。
アコは食事を取らないから食費は掛からないにしても、家に居れば電気を使うし風呂にも入る。
これまでよりも確実に光熱費が掛かるのだ。
独り暮らしをするなら貯金をしても余裕を持って暮らしていくだけの稼ぎはあるが、3人で暮らすとなるとどれだけになることだろう。
目先の利点だけ考えて安請け合いしたが、もっと現実を見るべきだったかもしれない。
まあ、最悪貯金を崩せばいいのだ。


「おっと、続き・・・っと。
お次は何を運ぼうかね」


きっとなるようになるだろう。
僕は和室へ戻る。
今更やっぱり考え直したいなんて言えないし。
僕がほんの少し立ち止まっている間に、アコの手によって細々したものがまとめられ、部屋の外へと運び出されていた。


「こういうのを入れて置く場所とか入れ物とか、やっぱ必要だなぁ」


物の山を見て、僕は思った。
この家には備え付けの収納以外の収納が、食器棚と本棚しかないのだ。


「そうですね。
せめて何か箱があればいいんですけど・・・
やっぱり、ビニールはあまり良くないですよ」


せっせと手を動かしていたアコが、いつぞやの僕の発言に苦言を呈した。

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