さよならアコ

僕のTシャツ

「そのままじゃあれだから、着替えようか」

「そうですね」


僕はクローゼットを開け、アコの服が入っている棚を漁った。
とりあえず下着を取り出しアコに手渡す。
それから寝間着になりそうなものを探した。

「どの服も寝辛そうだなぁ」


僕がアコの為に用意した服は大半は服というより衣装であり、機能性を重視したものではなかった。
いくつかカジュアルなものもあるが、それも寝間着にするにはいかがなものだろうかといった感じのものである。
さすがにスカートやジーパンは寝心地が悪いだろう。
今まではそれほどそういうことを気にしておらず、着せた衣装のまま寝かせることも多かったのだが、今の状態でそれをするのは何故だか気が引けた。


「どうしたものかな」

「どうしたんですか?」


ポロリと独り言が出てしまった僕を、先ほど渡した下着姿のアコが心配そうに見つめた。


「いや、パジャマってそういえば持ってないよなって」

「あー、そうかもですねぇ・・・。
このままでも大丈夫ですよー?」

「いやいやいや、それはダメっすわ!」


下着のまま寝るというアコの提案を僕は力強く否定した。
言い回しが面白かったのか、アコがくすくす笑う。
男としては魅惑的な提案ではあるのだが、いくらラブドールと主人とはいえそんな破廉恥なのはいけないと思います!
今朝もそうだったが、寝起きというのはどうにも理性が働かない。
寝惚け眼で獣になった後はなんとも言えない恥ずかしさともっと時間をかけてねっとりたっぷり絡み合いたかったという後悔に襲われるのだということを僕は知ったのだ。
僕の人間性のためにもアコにはきちんとした衣服を身に着けてもらう必要がある。
僕はアコの服が入った棚を元に戻し、自分の服が入った棚を開けた。
その中から自分が普段寝間着代わりに来ているTシャツを取り出す。


「仕方ないから、今日はこれで我慢してくれ」


Tシャツを手渡すとアコはなぜか目を輝かせた。


「ご主人様のお洋服!」


嬉しそうに僕のTシャツに顔を埋めるアコ。


「ご主人様の匂いがします!」

「いやいや、同じ洗濯機で洗ってるし。
同じ洗剤使ってるし」


なんとも言えないこそばゆさを感じながら、僕はアコの手からTシャツをひったくり彼女の頭に被せた。


「ふあぁぁぁぁ!
ご主人様のお洋服、大きいですねぇ・・・!」


ぎこちなくも何とかTシャツを着せると、アコは感嘆の声も上げた。
ふにゃふにゃと顔を緩ませながら、幸せそうに胸の前で手を合わせる。
これは可愛い、可愛すぎる。
アコの細い体に不釣り合いなゆとりのありすぎる飾り気のない紳士物のTシャツは、今まで着せたどんな服よりも可愛く見えた。
アコが嬉しそうに笑うからかもしれないし、僕の服だからというのもあるかもしれない。

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