さよならアコ

どうだか

はて、一体どうしたらこの誤解を解くことができるのだろうか。
困ったことに、何を言っても状況が悪化する予感しかない。
あの宇宙人に説明してもらうか?
いや、だめだ。
二人で口裏を合わせている感じになってしまう気がする。
というかそれ以前にあいつが説明をしてくれるとは思えないんだけど。
たぶん「何のことですか?」とか言って惚けるに決まっている。


「それは角度的な問題であって、僕は断じてキスなんてしていない!
やましいことなんて何もない!」


とりあえず僕は全力で否定した。
間違ったことは何も言っていない。
潔白なのだから、堂々としていていいのだ。
いやむしろ、堂々としていないといけない。
ここで少しでもたじろいだりおどおどした態度を見せれば、何かを隠している様に見えてしまうだろう。
アコは「どうだか」と言わんばかりにじとーっと疑いの眼差しで僕を見ている。
まるで罪人を見るような眼だ。
僕は思わず怯みそうになってしまうが、ぐっとこらえて彼女の目を見つめ返した。
こういう時は先に目を反らした方が負けなのだ。
しかしほんと、どうしたものかな。
恐らく僕が頑なな態度を貫いたからと言って、彼女が根負けすることはないだろう。
アコはアコで自分が見たものに絶対的な自信があるみたいだし、誰に似たのやらアコはこうと決めたら曲げない所があるのだ。
そんな忠実かと思ったら意外と頑固な所も魅力ではあるのだが、このままでは埒が明かない。
仕方がない。もう、どうにでもなれ、だ。
僕は立ち上がり、おもむろにアコに近付くと右手で彼女が頬に当てている手を片方捕まえた。


「な、なんですか!」


アコは驚いて一瞬怯む。
僕は透かさず開いた方の腕で彼女の腰を自分の身体へと思い切り引っ張り寄せた。
アコの軽い身体は加えられた力によって簡単によろめき、僕の胸へと身を預ける形になる。
すぐ目の前にあるアコの驚いた顔。
ここまでは計算通りだ。


「ちょっと、どういう・・・」


我に返り眉を逆八の字にして僕を睨むアコが口を開きかけた。
そこを狙う。
僕は自分の唇を押し当て、半開きのアコの口内へと舌を滑り込ませた。
要するに、無理矢理キスをしたのだ。
彼女は拒否をするように僕の胸を拳で叩いた。
ラブドールだからか、女の子だからか、それともこんな状況にもかかわらず僕に遠慮しているのか。
そんなに強い力ではない。
衝撃で肺から空気が漏れ咳込みそうになるけれど、でもそんなことはお構いなしだ。
本当に嫌なら僕の舌を噛み切ればいい。
でもアコはそれをしない。
口は開いたまま、僕を押し返すこともなく受け入れる。
まぁ、実際は受け入れたというよりされるがままなんだけど。
でもまぁ、僕にとっては好都合だ。

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