さよならアコ

不甲斐なさ

「なるほど」


ここまで無言だった宇宙人が唐突に口を開いた。
どうやら僕らがやり取りしている間、空気を読んで黙っていてくれたようだ。
キスの時はまったく伝わらなかったのに、わかっているのかわかっていないのかわからないやつである。


「あっ」


アコが僕から飛び退いた。
たぶん、宇宙人が居ることを忘れていたのだろう。
全て見られていたことに気付いた彼女は顔を両手で覆い、「あああああああっ」と羞恥と後悔と苦悩の混じった声を上げた。
あまり見ることのないそんなアコの姿が微笑ましく、僕はつい笑ってしまう。
僕からしたら少し大袈裟すぎる気もするが、そんなところがまた可愛かった。
女の子という生き物は色々と複雑で、感情の起伏が激しいものというイメージがある。
きっと行き場のない感情をどうにか放出する必要があるのだろう。


「な、何を笑っているんですか!
全部見られていたんですよ!?
私が早とちりで怒っていた所も、き、キスも!!」


そう言われると、確かにさっきのキスはかなりいやらしい感じのディープキスだったし、僕でも恥ずかしく感じるのだからアコにとっては相当なのだろう。
フレンチキスならここまで恥ずかしくもならなかったはずだ。
僕が答えようとした時だった。


「はい、見ていました」


思わぬ所から発言され、思わずそちらに目をやった。
テーブルの上に正座し控えめに片手を上げ、どういうつもりか宇宙人が申告する。
それに対し、アコが再び嘆きの奇声を発しながら両手で顔を覆った。
宇宙人は不思議そうにそれを見て首を傾げる。
彼女に悪気はないのだ。


「まぁまぁ、落ち着いて。
相手は宇宙人なわけだしさ?」


このままでは良くない。
僕はアコを慰めようと、その細い肩を数回優しく叩いた。
わかるよという意味もそこに籠めたつもりだ。
僕だって、恥ずかしくないわけではない。
だが、相手は宇宙人だと思うと不思議とあまり気にならないのだ。
なんというか、人に見られるよりマシなのだろう。


「そんなの、慰めにもならないですぅ!!
宇宙人さんだって、人みたいなものじゃないですか!」


僕の慰めは一刀両断された。
至極、ごもっともである。
こうなってしまうと僕は完璧に手詰まりだった。
どうにか慰めてあげたいとは思うのだが、自分でも驚くほど何も思いつかない。
アコは相変わらず顔を隠したままで、嘆いている。
どうしたものかと僕は宇宙人を見た。
相変わらずよくわからないと言った様子で、無表情ながら、どことなくきょとんとしているようにも見える。
助け船を期待していたわけではないが、あまりの不甲斐なさに僕は思わずため息が出そうだった。
もちろん、ここでため息なんか吐いたらますます状況が悪くなるだろうから、飲み込んだけれど。

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