連続小説

ひとり

今言ったことは嘘ではない。
アコを迎えるまで、僕も独りだった。
彼女のように周りが異星人と言うわけではないが、何処に居ても僕は上辺だけ取り繕って誰からも悪く思われないよういい人を装って、誰とも打ち解けられず距離を置いて生きてきたのだ。
時折世界には沢山人間がいるのに僕は独りぼっちだと思い、それがひどく寂しくなる。
だから、アコがこうなったのを見た時僕はとても嬉しかったのだ。
自分からそうなった僕とそうなるしかなかった宇宙人とでは全く状況が違うから同じだとは言わない。
けれど、寂しいのが辛いことは知っている。
知っているからこそ、放っておけないのかもしれない。
僕の話を聞き終えた宇宙人は目を細めたまましゃがみ込み、僕と目線を合わせた。
それから重々しげに口を開く。


「わかりません」


彼女の眉間に皺が寄る。
その顔は嫌な事を聞かれて不機嫌というか、苦いものを噛み潰してしまった時のようだった。


「寂しいという感情はわかりません。
ですが、その事を考えると胸部に違和感を覚えます」


服の上から胸を押さえ、宇宙人は更に顔を険しくした。
ここまで何を聞いても話し出せばすらすらと答えていた彼女が言葉を詰まらせながら、こんなにも険しい顔をするなんてよっぽどの苦しみなのかもしれない。
僕は彼女の背中を擦ろうと手を伸ばしかけ、あのボロボロの身体を思い出しやめた。


「あの・・・」


不意に飛び込んだ背後からの控えめな声に、僕は思わず跳ねた。
振り向くとほんの少しだけ開いたドアの隙間から目を潤ませたアコが覗いている。
目の周りが赤く、どうやら泣いた後のようだ。


「ごめんなさい、話が聞こえちゃいました」


壁が薄いのだから仕方がないのに、盗み聞きのようになってしまったのが申し訳ないのかそれとも泣いた後の顔を見られたくないのか、しっかりと右手でドアノブを左手でドアを押さえたまま申し訳なさそうな様子のアコに、僕は問題ないと答えた。
宇宙人も気にはしないだろう。
彼女はそもそもアコを物扱いするから。


「それなら良かったです」


安心したのかほっと息を吐くと、アコはドアを開け部屋の中に入った。
ずっとドア越しに話し続けるつもりなのかと心配だったが、そうではなくて僕もほっとする。
後ろの宇宙人をちらりと見ると、元の真顔に戻っていた。
こちらもすっかり落ち着いたようだ。
僕はアコを自分の横に来るよう指示し、彼女に向き直る。
何事もなかったように澄ましているが、さっきまでの苦しそうな様子が気がかりで僕は恐る恐る声を掛けた。


「大丈夫?」

「ええ、問題ありません」


先ほどの表情を見た後だからか、見慣れた彼女の無表情や淡々とした様子がなんだかロボットのように見えた。

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