さよならアコ

独りぼっち

「宇宙人さんも一緒にここで暮らすことはできませんか?」


アコから飛び出してきたのは思いもよらない提案だった。
僕は唖然とした。
口を開けたまま、首を傾げてみる。


「やっぱり、だめですかね・・・?」


僕の様子にネガティブなイメージを持ったのか、アコは不安そうに組んだ手を自分の口元へと近付けた。


「いや、ダメって言うか・・・いや、へ?
彼女をここに?一緒に?暮らすの?」

「そうです。
このお家で、三人で暮らすんです」


アコは頷いた。
ラブドールだからだろうか、怖いものなしというか突拍子もないというか、とんでもない事を言い出したものである。


「ええっと、どうしてそうなった?」


アコにそこに至った理由を聞きながらちらりと宇宙人を見ると、彼女も僕のように口をぽかんと開けてアコの方を見ていた。
さっきはまるで何も聞こえなかったような顔をしていたのに、しっかりと聞いていたようだ。
相変わらず無表情なので口だけがぽかんと開いているのがどうにもホラーだが、きっとアコの思わぬ提案に驚いているのだろう。
何を言われているのか状況を整理している最中なのか話し出す様子はないが、彼女が帰ると言い出してから姿を消していた頭上の発光体が再び現れ、まるでCDプレーヤーがディスクを回すような起動音を発していた。


「独りぼっちなんて寂しいじゃないですか。
宇宙人さんは宇宙人だけど、身体は私と同じラブドールだし、ここにはご主人様もいるし、絶対いいと思うんです。
もちろん、宇宙人さんが良ければですけど・・・」

「なるほどね・・・」


どうしてアコがそんなことを言いだしたのか、その説明を聞いて納得ができた。
これはうっかり道端で捨てられている動物を拾ってしまった時なんかによくあるシチュエーションだが、今回は犬や猫とは違う。
相手は宇宙人だ。
アコの優しさは素晴らしいことだと思うけど、未知のテクノロジーをもつマッドサイエンティストと暮らすのは色々と不安がある。
しかし、彼女が寂しいと思っているのは事実で、僕もアコと同じようにそれを聞いて可哀想だと、どうにかならないものかと思ったのだ。
アコが提案したように、一緒に暮らせば少しは寂しさも紛れるかもしれない。


「うーん、そうだな・・・」


僕は封印していた右手を開放し、顎に当てて考える。
彼女と一緒に暮らすのは未知の部分が大きく不安はあるが、メリットもある。
アコに何かあった時にすぐに対処してもらえるだろうし、一緒に住んでいればカメラで監視する必要もないだろう。
それに、僕が仕事で居ない間アコが一人で居なくて済む。
例え宇宙人だとしても、一人よりは心強いだろうし退屈しないだろう。
ただ、一つ気になることがあった。
それは宇宙人のアコに対する態度だ。

前の記事へ          次の記事へ
トップページへ

PAGE TOP