さよならアコ

一緒に寝ますよね?

すっかり綺麗になった風呂場で僕は手早くシャワーを浴びた。
途中アコが洗面所に出入りするのが曇りガラスのドア越しに見えたが声をかけられたり入ってくることはなく不思議に思ったのだが、浴室から出て、自分で用意した覚えのないきちんと畳まれた部屋着を見てその行為の理由がわかった。
どこまでの気の利くドールである。
僕はアコが用意してくれたその部屋着を有り難く使うことにした。
普段ならパンツのままなのだが、せっかく用意してくれたのだ。
使わないという選択肢はないだろう。
それを着て歯を磨き、居間に戻る。


「おかえりなさい!」


何事もなかったように部屋を出た時と同じ場所に座っていたアコが、僕の姿を見て立ち上った。


「ただいま。
服、ありがとな」


僕はアコの頭を軽く撫でた。
アコは照れくさそうに目を細めて微笑む。
撫でられるのが好きなようだ。
こうなるまで、アコの頭を撫でたことはあまり、いや、まったくない。
大切なドールではあるがなぜだか頭を撫でるという発想に至らなかったのだ。
嬉しそうなアコの顔を見ていると、これからはもっと頭を撫でてやりたいという気持ちになった。


「そろそろ寝るけどアコはどうするんだ?」


単身住まいで誰かが泊まりに来ることもないこの家には布団は普段使っている1組しかない。
アコの定位置は、寝室にある柔らかく臀部を包み安定させてくれる低反発クッションを敷いたスツールなのだが、現状だといつも通りでいいのか判断がし辛かった。
もし睡眠を必要とするのならば横にならせてあげた方がいいだろうし、寝ないならばこのまま居間に居てもらった方がいいかもしれない。
寝ない場合、いつものようにいつもの場所に座って居られるのは僕が落ち着かないだろう。
僕は返事を求めてアコを見た。
彼女は言われていることがわからない、と言ったような感じできょとんとしていた。


「えーっと・・・?
一緒に寝ますよね?」


アコが首を傾げる。
なるほど、わかった。
そうだ、アコを抱かない日なんて月に何度あるかわからない。
行為の後は後処理をしてそのままアコを布団に入れたまま寝ることが多かったのだ。
行為がない日もアコに添い寝をさせることが多かった。
つまり、そう、アコにとっては一緒に寝るのが当たり前なのだ。


「そっか、そうだよな」


僕は頷いた。
そうですよーとアコが笑う。


「じゃあそろそろ寝ようか」

「はいっ!じゃあこっち、電気消しますね」


アコが小走りに廊下に繋がるドアの横にある電気のスイッチに向かい、ぱちりとスイッチを押した。
僕は暗闇の中、手探りで寝室のドアを開け、電気を点ける。
寝室もきれいに片付いており、敷きっぱなしの布団もきちんと整えられていた。


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