さよならアコ

一体いつから?

アコが逃げ出したのは僕のせいじゃないのでそっとしておくことにした。
彼女も落ち着いたら戻ってくるだろう。
寧ろ、これから確認する内容によっては場を離れていた方がいいかもしれない。
僕は一旦深呼吸で気持ちを落ち着かせ、宇宙人との会話を続けた。


「失礼、あまりの衝撃にちょっと取り乱した。
それで、えーっと、一体いつから?」

「はて、いつからと言いますと?」


間にひと騒動挟んだからか、宇宙人は僕の質問に対し惚けた様子で首を傾げた。
僕は懇切丁寧に言い直す。


「僕らを監視していたのはいつからです?」


この宇宙人は宇宙人だからか、一から十まで言わないと伝わらない。
宇宙人だから仕方ないと思いつつも、僕はそれが無性に面倒くさくて仕方ない瞬間がある。
ひとつ救いなのは、彼女は質問に対して隠すことも端折ることもせずいつも真面目に答えてくれることだろう。


「そうですね、本格的な観察を始めたのは細胞の変異が始まった3か月前だったかと」

「3か月前!」


思っていたよりも長い期間に僕は思わず復唱してしまい、慌てて口を手で塞いだ。
アコに聞こえたら増々気にするかもしれない。


「3か月って言ったら、結構長いじゃないですか!」


せいぜい1週間、長くて1か月くらいと思っていた僕は予想以上に長い期間見られていたことに驚きを隠せなかった。
それだけの期間、気付かないで僕は生活していたのだ。
僕は部屋の中を見回し、カメラを確認する。
一見何も見当たらないが、見られていたということは何らかの仕掛けがあるはずだ。


「カメラ!カメラはどこに!?」

「粒子を発生する装置に」

「それはどこに!?」


彼女はテレビをすっと指差した。
僕はそれを目で追う。


「そんなところに!」


僕が立ち上がってテレビを確認しようとすると、指は続けてキッチンの換気扇を差す。


「そこにも!?」


換気扇なんて如何にもじゃないか。
僕の注意はテレビから換気扇へと移る。
数日前まで埃っぽかった換気扇は、アコによってピカピカに磨かれている。
彼女は掃除のときに気が付かなかったのだろうか。
僕が換気扇の方へ足を向けようとすると、また指が動いた。
そして部屋のあちこちを指差す。
計58か所。
家電や隙間などあちらこちらを指差して、彼女はようやく手を降ろした。


「多い!!」


僕は思わずつっこんだ。
なんとなくエアコンの室外機のようなものをイメージしていた僕は、まさかそんなに沢山仕込まれているなんて想像もしなかったのだ。
とりあえず一番近いテレビを確認する。
一見何の変化もないいつものテレビだが、ここに仕込まれているというのだろうか。


「内側に組み込んであるので、外から見てもわからないと思います」


僕の様子を見ていた宇宙人がしれっと言う。
いつの間にかテレビを改造されていたらしい。
僕は頭が痛くなり、こめかみを押さえた。

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