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連続小説

彼女の都合らしい

「え。
今なんて?」


はっきり聞こえていたが、僕はわざとらしく聞き返す。
もう一度確認したいというのと、現実であって欲しくないというのと、もしかして気が変わってくれないだろうかというのと、とりあえず現状について考えたいから時間稼ぎのためと、色々と複雑な心境から出た奇行だ。
アニメやらドラマなんかでたまに見るわざとらしいあれだ。
これまで僕はそういったシーンを実にまどろっこしいと思っていた。
いやいや今の絶対聞こえていただろう!と。
まさか自分が同じことをする日が来るなんて。
今なら僕にも彼らの気持ちがわかる。
普通ならどうして聞いていなかったのかと責められてもおかしくないのだが、生真面目な宇宙人は怪訝な顔をひとつせず、まるで巻き戻してもう一度再生したように同じ文言を同じ調子で繰り返した。
思い悩んで躊躇ったり、考え直す様子は全くない。
カメラを止める気は全くないようだ。
そしてそれは彼女の都合らしい。


「なんで?」


僕はとりあえず理由を聞く。
理由次第では何かカメラで監視する以外の方法が思い付くかもしれない。


「研究の対象だからです。
現在自律した意識を持って動いているのはここだけなので、変異の様子や速度等を記録しなければいけません。
それと、いつも見ていれば変化があった時にすぐに対応できますから」

「なるほど・・・」


わかっていたが、彼女だって何も興味本位で覗いているわけではないのだ。
それに見られるのは困るが何かあった時にすぐに来られるというのは心強い。
そう言われるとこれ以上は安易にカメラを止めろとは言えなかった。
しかし、四六時中見られているのはやはり辛い。
特にあれを、イチャイチャしたりキスやえっちをしているところを見られるのはきつい。
例え相手が宇宙人で好奇心ではなく研究のためだとしても、遠慮願いたい。
僕は頭を捻った。
だが全くと言っていいほど何も思い浮かばない。
少し考える時間が欲しい僕は時間を稼ぐため、先に気になったことを聞くことにした。
さっきの宇宙人の言葉の中に、気になる部分があったのだ。


「さっきの、今はここだけっていうのだけど。
どのくらい、いくつの場所に仕込んだんだ?」

「この周辺の似たような環境30か所ほどに同じように」

「30か所!?」


思ったよりも多くて僕は驚いてしまった。
僕の部屋だけでも50以上の装置が仕掛けられているのに、それだけの場所に同じように装置を仕掛けてあるというのだから。
この宇宙人、やはりただものではない。
まぁ、宇宙人なんだから最初からただものではないのだけれど。
それに、周辺というのがどれだけの範囲なのかわからないがこの周辺にラブドール所有者が30人もいるという事にも驚きだ。

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