さよならアコ

彼女を比べてみたい

「ちゃんと失敗した時のことも考えているんだな」

「ええ。
大切にしている人形を使わせてもらっているので、当たり前です。
それに、私たちにとってその星の先住生物を脅かしたり、必要以上に私たちの存在を知られることは重い罪になりますので」


勝手に部屋に侵入して変な装置を仕掛けラブドールに常識外の改造を加え、人の私生活を覗き見ることは罪にならないのだろうか。
僕はこの星の先住生物のはずだが。
それに僕は今面と向かって宇宙人と対峙しているのだがそれはいいのだろうか。
実験対象のラブドールの所有者としてその辺は必要ってことで免除されているのだろうか。
引っかかる点はあるが、とりあえず心掛けだけは評価しておくことにした。
ずれてはいるが、優位な立場にあるにも関わらず対等に生きようとしてくれていることはわかるからだ。
ところで。
罪になるということは、彼女以外にもこの地球に宇宙人が居るということだろうか。
まさか自分で自分を裁くということもないだろうし、仲間がいるに違いない。
彼女の仲間なんて、実に興味深いじゃないか。
僕の好奇心が騒めきだす。
他の宇宙人も彼女のように無表情なのだろうか。
ここまで宇宙人だからと見逃してきた部分が多々あったが、それが宇宙人としての振る舞いなのかそれとも彼女の性格的な部分なのか、出来れば他の宇宙人と彼女を比べてみたい。


「なぁ、研究って仲間と一緒にやってるんだろ?
もっと話が聞きたいな。
良かったら他の人も紹介してくれないかな」


大学生の時に覚えたテクニックを駆使して僕はなんとかこの場に他の宇宙人を呼んでもらおうと、好奇心を隠しつつさりげないフレンドリーさを装い彼女に言った。


「いえ、一人です」


僕のわざとらしいお願いは一瞬で一刀両断される。
人間相手ならいやいやそんなというところなのだが、真面目な彼女が言うのだから冗談ではないのだろう。
一言で用件は済んだと思ったが、続きがあるらしく間を置いて彼女は言葉を続ける。


「基本的に、私たちは単独で生きる生き物なのです。
人間やこの星の他の生き物のように、男女で子を成す必要もないので。
私たちの繁殖方法は、こちらで言う所の分裂に近い方法ですね。
単独で個体数を増やすことができるのです」

「なるほど?」


何を言うかと思えば、突然自分たちの生態について語り出した宇宙人。
脱線しているような気もするのだが、僕は黙って彼女の言葉を聞く。


「私たちは生まれた瞬間から親と同じだけの知識量を持ち、大人や子供といった概念は有りません。
生まれるとすぐに親が用意した装置で宇宙空間へと放り出されます。
そして同種が居ない星を探し、良さそうな星が見つかればそこに降り立ちます。
基本的に、親以外の同種は見たことがありません。
それに、親を見たのもその一回きりです」


そう言った彼女の表情は、どこか寂しげに見えた。

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