さよならアコ

家族?

僕も仕事中たまに、よくある。
集中すると口が開いてしまうのだ。
しかしまあ、宇宙人で身体はラブドールだというのに、突然人間っぽい一面を見せるものである。
細胞とか変異とか言っていたけれど、唾液も出るのだろうか。
そう言えばアコとキスするとき、いつも口の中はしっとりしていた。
やはり唾液、というか体液があるのだろう。
悲しかったり恥ずかしすぎたりすると涙が出るようだし、行為の際には中も濡れていた。
いやはや不思議な物である。
一体どういう原理なのだろう。
僕の理解が及ぶものではないとはわかっているのだが、なんだか気になってきてしまった。
体液なのだろうか、細胞が分泌する何かなのだろうか。
僕は度々アコの口を介して口にしているのだが、大丈夫なのだろうか。
考えるとぞっとしてきた、一旦置いておこう。


「え、ああ、えっと、何か言った?」


僕が思考の寄り道をしていたのは短時間だったが、その間すっかり自分の世界に入ってしまっていて周りを見るのを忘れていた。


「まだ誰も何も言ってませんよ!」


アコが呆れたような、驚いたような、何とも言えない顔をする。
よほど短時間だったのか、とうとうおかしくなったと思われたのか、さっきまで親指を立てていたアコはもういなかった。
アコが口を開いた際口内がてらりと光るのが見えて思わず目を反らしてしまったが、それは秘密だ。


「あの、いいでしょうか」


充分唇が潤ったのか、宇宙人が何事もなかったように口を挟む。
もうすっかり大丈夫なようだ。


「あ、はい。
どうぞ」

「カメラをオフにする件ですが、この部屋の中に居る間は構いません。
ですが、私がここの外に出る際は同意できません」

「あー」


そうだ、そう言えばこいつはアコと違って出歩けるのだ。
思わぬ盲点に僕は顎に手を当てて考える。
まさかそんなにずっと監視しているとは思わなかったが、彼女の言い分はわかるのだ。
確かに僕が仕事なんかで留守にしていて、彼女も出掛けている間にアコにもしものことがあった際、困る。


「それは追々考えよう。
例えば何か体に変調があった時に知らせるスイッチのようなものを用意する、とか。
出来ればカメラは無しにしたいけど、どうしても無理ならアコが一人の間だけカメラを付けるとか。
その辺はこれから家族になるわけだし、そういう事を考えるのも家族だしな」

「なるほど、興味深いです」


咄嗟に出た返答だったのだが、宇宙人は納得したようでそれ以上は突っ込まなかった。
根本的な解決策を示したわけではないが、どうやら一緒に考えるという部分が気に入ったようだ。
そもそも考えることが好きなのか、それとも家族と一緒にという部分が良かったのかはわからないが、すぐさまいい解決策が思い浮かぶわけでもない僕にとっては有り難いことだ。

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