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連続小説

期間限定

コンビニまではそう遠くもなく、すぐに到着した。
夕方という事もあってか店内は数人の客と、レジで接客中の若い店員とおそらく交代前でやたらと時間を気にしている年配の店員が居る。
どちらの店員も、今レジで会計をしている女性も、見慣れた顔だ。
なぜならここのコンビニは家から近いこともあって、もうすっかり常連だからだ。
僕はいつも通り雑誌コーナーの前を進み、飲料コーナーへと向かう。


「何を買うんですか?」

「何って、夕飯だろ。
宇宙人・・・お前もなんかいる?」

「そうですね」


目に付いたペットボトルのお茶を手に取りながら僕が言うと、彼女は隣のケースを開けて中から鮮やかなオレンジ色の飲料を取り出した。


「これ、新発売なんですよ」

「なんでそんなこと知ってんの!?」


まるで僕に教えるように、手にしたペットボトルのラベルを見せる宇宙人。
確かにこの商品では初めて見る味だ。
期間限定って書いてあるし。
それはいい。
問題はそこではない。
宇宙人は僕の問いに小首を傾げてさも当然だという表情をして答えた。


「なぜって、コンビニでアルバイトをしているからですね。
新しい商品が入荷すると情報を確認する義務がありますので」

「おう・・・まじかー・・・」


ここは外だ。
周りの人間に彼女が宇宙人だと知られたらまずい。
僕は極力リアクションを押さえ、平静を装う。


「そっかー、アルバイトしてるのねー。
へええー、コンビニでー、そっかー。
どうやって・・・いや、なんで?」

「何故って、お金がないと困るからです。
この星は何をするにも何を得るにも大体お金ではないですか。
ウィッグは拾ったものですが、この身体もこの服も靴もお金で買っています」


ここで僕は彼女の口を手で塞いだ。
彼女の言う事はもっともだが内容がまずい。
服、靴は金で買うのは普通だ、いいだろう。
しかし身体はまずいだろう。
あと、しれっと星とか言ってくれちゃってるし。
雑誌コーナーで立ち読みしているおっさんが怪訝な顔でこちらを向いたので、思わず手が出てしまったのだ。
電波さんだと思ってくれればよいのだが。


「この話は帰ってからな」


僕は小声で彼女の耳に告げる。
小刻みに彼女は頷き、僕は手を離した。


「そう言えば、外でしたね。
失念していました」

「おまえ、そんなんで大丈夫なのかよ・・・」

「何がです?」

「いや、なんでもない」


外で働いているこいつなんて想像できないが、人との接し方はなんとなく想像ができる。
この無表情さと冷たい物言いできっと近寄り難い存在なのだろう。
今時の若い子は、なんて言われているのだろうか。
おばちゃんにそう言われる宇宙人を想像すると、なんだか笑える。


「カップ麺・・・はアコが怒りそうだな、なんとなく。
弁当にするか」


できるだけ体に良さそうな物の方がいいのだろう。
家にあるカップ麺には手を付けず、米だけやたら食わせてきたことを考え僕は弁当のコーナーへ向かった。

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