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連続小説

これは驚くって!

宇宙人は履いてきた蛍光カラーの長靴みたいな素材でできたショートブーツを手も使わずに履く。
僕はどうせそこまでだからとアコに履かせたゴム製のサンダルを履いて外へ出た。


「おお!?」


外で出た途端、目の前で起こった変化に僕は驚く。
一緒に歩く最大の難点だった宇宙人のギャラクシー色の髪から、色味が下へ下へと抜けていき、あっという間に綺麗な金髪へと変わったのだ。
僕は思わず彼女の足元を目で確認したが、抜けた色味は何処にもなかった。
だから別に、髪の毛の中で何らかの微生物的な物を飼っていたというわけではないのだろう。
だからといって、所謂絵の具のような、色味の原因になっていたものの痕跡もない。


「そんなに驚かなくても」

「いやいやいや、これは驚くって!
いったいどうなっちゃったわけ?その頭!」

「ドアを閉めたので、毛髪に付着していた粒子を使い切ったのです」


説明をしながら、宇宙人は歩き始めた。
僕はまたもや彼女の後を追う。


「それって、その髪もつまり、身体みたいに生き物になろうとしてる・・・ってことなのか?
でも身体は光らないよな、アコが光ってるとこ見たことないし」

「そうですね。
粒子も万能ではないので、変異させる物質によって細かい調整が必要なのです。
実を言うと髪の方はまだ調整中で、粒子を受けると光ってしまうし人間の倍以上の速さで毛が伸びてしまうのです。
あれ・・・アコが光らないのは、まだ調整中なので髪まで変異を進めていないからですね」

「なるほど・・・
てゆうか、粒子が無くても大丈夫なの?」

「問題ありません。
髪は身体とは事情が違うようなので・・・
一度伸びた髪の細胞は、身体の細胞のように粒子不足で死ぬという事はないようです。
今のところは。
粒子が無ければ、これ以上毛が伸びないウィッグですね」


それは普通のウィッグでは、と僕は心の中で突っ込んだ。
言われてみれば、彼女の髪は初見時より明らかに伸びていた。
元々長い髪だったから気が付かなかったが、見ればすっかり彼女の身長を追い越して、毛先を引き摺ってしまっているじゃないか。
それを指摘すると、彼女は「後で切ります」と言った。
そうは言うが、外を歩くのに髪を引き摺っていくというのは気持ち悪くないだろうか。
何が落ちているかわからないし。


「なあ、その髪、軽くまとめてもいいか?」

「構いませんが。
気になりますか?」

「まあね。
やっぱ外だしさ」


許可を得た所で、僕は彼女を立ち止まらせその長い髪を後頭部でまとめ、さっきの片付けの際後でなんとかしようと思ってポケットに入れた輪ゴムで留めた。
思っていたよりも毛が細いのか、輪ゴムに絡んで留めにくかったが、なんとかまとまったのでこれで良しとしよう。
ただ留めるだけではまだ引き摺ってしまうので、半分ほどの所で折り返してさらにもう一本輪ゴムで留める。
職場の事務の女の子が、こんな髪型してたっけ。


「こんなもんかな」


簡単にまとめたにしてはしっかりとまとまっているし、見た目も悪くない。
初めてにしては上出来じゃないだろうか。


「器用ですね」


宇宙人もまんざらではない様子だ。
僕らは再び歩き出した。

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