さよならアコ

なんだかおかしい

「それで、もうひとつの条件というのは?」


一息入れる暇もなく、宇宙人は僕に問う。
まだ彼女の口からは一緒に暮らすかどうか明確な答えも希望も聞いていないのだが、こちらが強引に押し進めたのもあってか彼女もすっかりその気のようだ。
或いは興味がある段階で、条件次第といった所なのかもしれない。
どちらにせよ興味はあるのだろう。
表情からはわかりにくいが、ここまでほぼこちらの質問を受け付ける側だった彼女が僕に問いかけ、ここまでの話を否定するでも関心がないのにこちらに合わせているわけでもないのだから。


「それなんだけど、ここで一緒に暮らす以上僕らは家族になるんだ。
だから、僕もアコも同じように平等に家族として接してほしい」


宇宙人がアコを物扱いしていることをアコに悟られないよう、言葉を選びながら僕はもうひとつの条件を彼女に告げた。
もしかしたら気付いているかもしれないが、もし気付いていなかったら自分が物扱いされていることに傷付くかもしれないと思ったのだ。


「ふむ」


僕の言葉を聞いた宇宙人は先ほど僕がしたように顎に手を当てて黙り込む。
言ってから気付いたが、家族と言ったがそれで良かったのだろうか。
確かにアコは一緒に暮らしている大切な存在で家族なのだが、家族というとなんとなく、父が居て母が居て子供が居てなんていう想像をしてしまう。
となると、この場合は僕が父でアコが母、宇宙人が子供・・・だろうか。
よく考えてみるとなんだかおかしい。
アコをみると、わかっているのかいないのかきょとんとした顔をしている。
共同生活を提案したのはアコだが、家族という事は考えていなかったのだろうか。
或いは、宇宙人が家族の一員になるという発想がなかった。
違うな、きっと改めて条件として家族として接してほしいなんて言ったのがよくわからなかったんだ。
アコは何も言わないが、家族と表現したことが正しいのか段々わからなくなってきた。
かと言って一緒に暮らすのに宇宙人だけ居候と呼ぶのはどうだろう。
それでは一緒に暮らす意味がないのではないだろうか。
思考していた彼女が険しい顔で重々しく口を開く。


「平等に家族として、ですか・・・」


「嫌か?」

「いえ、そうですね・・・
わかりません。
私はドウゾクもカゾクもナカマもトモダチも持ったことがないので、そのように接するようにと言われてもどうするのが正しいのかわかりません」


僕は言葉選びを間違えたことに気付いた。
どうにも僕ら人間は家族や仲間、友達なんかが居るのが当たり前で、それを綺麗な言葉のように軽々しく使ってしまう傾向がある。
他に何かいい例え、表現がないだろうかと僕は頭をフル回転させた。
僕と同じように、と言おうかとも思ったがそれはアコが気を使うだろう。


「大丈夫ですよ!」


その場の重たい空気を鈴のような声が駆けた。
飛び出したアコがぎゅっと宇宙人の手を握る。

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