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連続小説

オオカミ

「ご主人様がえっちな気分になってしまうかもしれないってことですよっ!」


アコは早口に、できれば察して欲しかったのであろう事情を告げた。
変な気は有りでえっちな気分が言いにくい理由は僕にはいまいちよくわからないが、しかし確実に後者の方が言われた方のダメージは大きい。
言い方ってやっぱり大事なんだなと僕は改めて思った。
ところで、えっちな目で見られる可能性を告げられた宇宙人だが、見えていないので何とも言えないのだが気配から察するに動じる様子はない。
普通の神経をした人であれば、それまで意識していなかったとしても告げられたことにより自分がやばいことをしているのだと焦ったり恥ずかしがったりするものだが。
やはり宇宙人、セオリー通りにはいかないということか。
しばしの沈黙。
おそらく思考タイムの後、宇宙人は聞き覚えのある調子で話し始めた。


「なるほど・・・それは思いもしませんでした。
そういえばこの身体は地球人女性を模しているものでしたね。」


反応が僕が謎の組織の話をしたときとほぼ同じである。


「そうですよ!
宇宙人さんはどうかわからないけど、人間の女性はいきなり服を脱いだりしないんですよ!
男の人はオオカミなんですから!危ないんです!」


そんな事を教えた覚えはないのだが、アコが人間の女性の在り方と男性への間違った認識を宇宙人に説いた。
僕から地球人男性という大きな括りへと矛先が変わったのはいいが、なんだか複雑な気分である。
所謂大人の玩具であるラブドールのアコが言うと妙に説得力があるが、しかし大切にしてきた彼女は男はオオカミなんて言い出すのはいかがなものだろう。
アコは男は僕しか知らない。知らないはずだ。
大切なラブドールを誰かに貸したりするわけないし、今までのアコは自分で立ち歩くことはできなかったから僕の知らないうちに誰か別の男になんてこともあり得ない。
だから要するに、アコが男はオオカミと言うということは、つまりそのまま僕がオオカミということになるのではないか。
えっちな奴だと思われていたことと合わせて、ダブルパンチである。
これではまるでアコの中の僕は変態じゃないか!


「ふむ・・・しかしそうだとしても、私が外を出歩ける理由はこれを見てもらうのが早いのです。
同時にこれからのことについてもお話しできますし。
あなたの心配はもっともかもしれませんが、話が進まないのでその手を離してください」


床の軋む音で宇宙人が動き出したのがわかった。
ゆっくりとこちらに近付き、手を離すことを渋っているアコの手の上に手を重ねる。
アコに抵抗する様子はない。
ただされるがまま、そっと僕の顔から彼女たちの手が離れていった。

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