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連続小説

ずっと独りぼっち

「そして私たちには一つの星に寄生するのは一人という決まりがあります。
複数の仲間が思い思いに生物を増やしたり実験をすれば、星の生態系を壊したり争いが起きたりしますから」


映画やゲームなんかのせいで宇宙人というと侵略するイメージが強いが、彼女たちは全く正反対だ。
ここまでのやり取りでも感じていたが、思っていたよりも他の生き物を大切にしているようだ。
僕はなんとなく、だから彼女は変異させる対象にラブドールを選んだのかもしれないと思った。
生まれた時から独りぼっちで、自分以外を必要としない宇宙人。
一人で繁殖できるということは、愛なんて知らないのだろう。
そうする必要がないのだから。
そんな彼女はどんな気持ちで人間を観察していたのだろう。
僕がアコと愛し合っている様子を、どんな気持ちで観ていたのだろう。
きっと、不思議な気持ちだっただろう。
そして、体験したいと思ったのではないだろうか。
人と繋がったらどんな気持ちになるのか、どんな感じなのか、きっと自分もしてみたいと思ったに違いない。
だから彼女はラブドールを選んだのだろう。
ラブドールなら人間ではないが限りなく人間に近い、同じ生物じゃなくても愛し合える唯一の存在だから。
そう考えると僕はなんだか悲しくなってしまった。
生まれてからずっと独りぼっちなんて、寂しいじゃないか。
この星には沢山の生き物が存在していて、すぐ近くには意思の疎通ができる人間が、これまた嫌になるくらい沢山いるのに自分だけ一人だなんて。
目頭がじりじりと熱くなり、涙袋の辺りがぴくりと動く。
ああ、困った。
年々涙腺が緩くなっているみたいだ。
この前もテレビでやっていたドラマで、生まれたばかりの子供が独りぼっちになってしまうシーンでうっかり泣いてしまったばかりだった。
もしかしたらその子供と彼女がほんの少しダブってしまったのかもしれない。
被っているのは独りぼっちになるという部分だけなのだが、それがまた良くなかったみたいだ。
ガタが来ている僕のダムが決壊してしまわないよう、僕は瞬きをした。
滲んだ涙が目蓋に引っ張られて眼球を潤す。
これなら目の前に居る彼女に僕が泣きそうだということはばれないだろう。


「なんですか、その顔は」


宇宙人は不思議そうに目を丸くしてこちらを見ている。
もしかしたら僕はよっぽど可笑しな顔をしていて、物珍しいから観察されているのかもしれない。


「何でもないよ」


僕は頬に力を込めながら答えた。
そうじゃないと涙腺が危険なのだ。
あまり口を開けば泣いてしまいそうだったから、それ以上は何も言えなかった。


「そうですか」


彼女はそれ以上追及しなかった。

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