連続小説

理由

解放された視界はただ眩しく、僕は思わず顔をしかめた。
暗さに慣れた瞳が映す光の刺激はこめかみに痛みを与え、僕は下を向き違和感が残る目を数度擦って光を散らす。


「大丈夫ですか?」


背後にいるアコが心配そうにそう言って、僕の肩に触れた。


「大丈夫、大丈夫。
ちょっと眩しかっただけだから」


実際大したことはないのだ。
若干涙が滲む瞳は徐々に光に慣れて、僕はようやく頭を上げた。
目の前にはやつがいる。
僕の目の前、ソファと僕の間に挟まれているテーブルに、前情報通りの一糸纏わぬ姿で鎮座している。
テーブルに座るなんて行儀が悪いと注意の一つも入れたい所だが、そんな余裕はなかった。
僕は息を飲み、その身体を凝視した。


「ご主人様、あんまり見るのは・・・っ」

「ごめん、ちょっと待って」


止めようとするアコを静止する。
アコが心配しているようなことは間違いなく、あり得ないと断言できる。
目の前に居るそれは確かに形は地球人女性のものであるが、全く別のものなのだ。
具体的には、そう、なんというか、何かが体中を覆っていた。
肌とは明らかに違うのだが、それが何かはまったくわからなかった。
機械なのだろうか。
形も大きさも色もそれぞれ異なる部品のようなもので、時々僅かに点滅する。
それは体にペイントされているわけでもシールのように貼られているわけでもなく、よく見ると肌に直接、ねじ或いは杭のように差し込んでいるようだった。
腫れや血が滲んでいる様子はないから、痛みはないのだろう。
もしくは彼女のその部分はラブドールのままなのか。
ドール愛好家ならば目を反らしたくなるような痛ましい身体だ。
顔以外には全身隈なくそれが付いており、肌の露出とそれとの割合はほぼ1対1である。
これでは裸とは言えないのではないのだろうか。
パッと見た感じ、SF物に出てくるボディスーツに見えなくもない。
アコはこれを裸と判断し、僕に見せまいと奮闘していたのか。
なぜこれで僕が性的な興奮を覚えると思ったのだろう。
どう見ても異様じゃないか。
もしかしてラブドールには見えない部品とかなんだろうか。
僕は微妙に納得できなかったが、まぁ仕方あるまい。
僕が一通り確認し終わると、それを待っていたかのように宇宙人は口を開いた。


「これが私が外を出歩くことができる理由です。
これは私が作った粒子を発生させる装置なのですが、これを身体に直接差し込むことによって粒子を細胞に与えることができるのです。
ですが」


一旦言葉が途切れる。
もしかしたら、僕らにわかりやすいような説明を考えているのかもしれない。
これまでの説明もそうだが、何かを説明するとき彼女は専門的な言葉を使わずあえてわかりやすく簡潔な言葉で言ってくれていたような気がする。
優しさか、こちらがわからない点を質問してそれに答えるという二度手間を避けるためか。
どちらにせよ、彼女はこちらのレベルに合わせて会話をしてくれているということは僕にもわかる。
僕はただ彼女が続きを話し始めるのを待った。

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