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連続小説

知り合い?

夕方というだけあって、それなりの種類がある。
ここに来るのは仕事終わりの遅い時間が多いから、いつもは種類がほとんどなく、多めに仕入れているのであろう定番商品の中でも地味めな幕ノ内や鮭弁、それから丼物くらいしか残っていないのだ。


「どれにしようか・・・
こんなにあると迷うな。
いつものにするか、冒険してこっちの期間限定のパスタ・・・
いや、やっぱ米かな」

「これ美味しかったですよ。
量もありますし。
お弁当は美味しいけれど少ないんですよね」

「お前、弁当も食うのかよ・・・
てか、味覚あるんだな」


食事はいらないと言ってなかっただろうか。
いや、僕の思い込みか。
お茶や水を飲んでいたから、食べ物を食べたって何もおかしいことはない、かもしれない。
アコが何も食べられないから、こいつも何も食べないものと勝手に思っていた。
色々と聞いたせいで、インパクトが大きかったこと以外正直あまり頭に入っていないのだ。


「お前も何かいる?」

「じゃあ、これを」


彼女が取り出したのはいかにも女子が食べそうな野菜たっぷりでオリーブの実なんかが乗った、今流行のSNS映えを狙ったであろう小洒落たサラダパスタだった。


「これだけだと少なくない?」


値段の割に、量が少なくて僕は買ったことがない。


「問題ないです。
そもそも食事は必要ないので」

「ええ・・・
じゃあなんで食うんだよ・・・」

「いろいろな味を感じるのって、面白いじゃないですか。
こんなに複雑かつ膨大な種類の味があるのなんてこの星くらいですよ。
他の星の生物はそもそも食事なんて非効率なことしないですから」


僕は渡されたプラスチックの容器を受け取りながら、ふと思ったことを口にする。


「食事をするってことはさ、やっぱり排泄もするんだよな」

「いえ、それはありませんね。
装置が分解して粒子に変換してしまいますから」

「そうか、じゃあうんこはしないのか・・・」

「その言葉はこの場には不適切だと思います」


後ろのパンコーナーで見切り品を物色しているおばさんの視線に気付き、僕は口を噤んでそそくさとレジへ向かった。
若者の店員のレジが接客中だったので、仕方なく空いている怠そうなおっさん店員の前に商品を置く。
もうあからさまに嫌そうな顔で仕方なさそうにレジを操作し始めるおっさんだったが、僕の横に居る女を見て顔色が変わった。


「あっ、どうも。
へー、えっ?彼氏?」

「お疲れ様です。
違います」


見慣れた店員の態度の変化に僕は戸惑う。
このおっさんはいつも不愛想で面倒くさそうで嫌なやつなのだが、愛想笑いなんて浮かべているのだから。
どうやら2人は知り合いのようだ。


「知り合い?」


僕は小声で宇宙人に訊ねた。


「アルバイト先の同僚です」

「え!?
お前のバイト先ってもしかしてここ!?」

「はい」

「見たことないんだけど!?」

「日中のシフトですので」


驚愕の事実に僕は絶句しながら会計を済ませる。
その間に、弁当を温めるかと店員に聞かれ、宇宙人がはいと答えた。
弁当を温めている間、店員と宇宙人が当たり障りの無い会話をしていたが、一方的におっさんが話しかけ宇宙人が素っ気無く一言で返すという地獄のようなものだった。
もしかしておっさん、こいつに気があるのか?


「じゃあ、また月曜にね」

「お疲れ様です」


温まった弁当と、それとは別の袋に入れた冷たいものを受け取り僕らは帰路についた。

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