さよならアコ

率直な質問

「そうですね、何から話しましょうか」


アコが持ってきたお茶のおかわりを一口で飲み干し、女は途切れ途切れに話し始めた。
またおかわりの要求を想定してか、アコは急須を彼女の湯呑の横に置いて、自分は僕の後ろに下がる。


「まず、そうですね。
そのことを伝えなければなりませんね」

「そのこと?」

「それのことです」


女の視線を追って、僕は自分の背後に目をやった。
そこにいるのはお茶を淹れ終え僕らの会話をじっと聞いているアコだ。


「私ですか?」


注目を浴びたアコが目を丸くして自分を指さす。
当然と言えば当然なのだが、先ほどまでただのお茶汲み係のような扱いを受けていたのだから突然話を持ってこられて驚くのは仕方のないことだろう。


「ええ、あなたです」


女は頷いて、話を続けた。


「それに自律機能を与えたのは私です」

「やっぱりか」


こいつが宇宙人だとわかった時から、そんな気はしていた。
あのタイミングで現れたこともそうだが、外に出られないと、まるでルールがあるように言ったことから考えても、この女が関係があるということは明白だった。


「えっ!そうなんですか!?」


当事者であるアコだけが驚きの声を発する。
彼女がそれに答えることはなかった。
彼女の様子から察するに、彼女にとってアコは対等ではないのだろう。
おそらくそれは、アコが人形だからだ。
それをどうこう言うつもりはないが、あまりいい気分ではない。
しかしだからと言って、何か言うつもりはなかった。
僕はもやもやした気持ちをぐっと抑え、話を続ける。


「なんでそんなことを?」


率直な質問だった。
僕のラブドールに意思や自由を与えることがこの宇宙人にどんなメリットがあるというのだろう。
ただの気まぐれと言われればそれまでなのだが、これを疑問に思うのは避けては通れないというか当然と言うかまぁ仕方のないことだろう。


「実験です」


女の答えはとても簡潔で、わかりやすいものだった。


「見てのとおり、私は科学者です。
物体を自律させて生物にするという研究をしています」

「ちょっと待ってください、どの辺を見たらあなたが科学者だと!?」


僕は突っ込まずにはいられなかった。
僕の知る限り、彼女のような科学者はいない。
風変りという点を言えば確かに科学者っぽくはあるが、見た限りでは常人では理解できない系の行き過ぎたお洒落さんである。
もしかしたら宇宙的には限りなく科学者っぽい格好なのだろうか。
だとしたらツッコミを入れた僕の方が常識はずれということなのだろうか。


「おかしいですね、地球ではこの布を着ていれば科学者の証明になると聞いたのですが」


彼女は自身の羽織っている白衣を引っ張った。
それを見て僕は納得する。


「なるほど、それは確かに科学者だ」

前の記事へ          次の記事へ
トップページへ

PAGE TOP