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連続小説

頼もしい嫁

要するに、うちに泊まることで僕の世話を焼くのが嫌だと言うのだ。
何もしなくていいと言っても、あれやこれやと目に付いてしまうのだそうだ。そう言うわけで、折角布団を購入したにもかかわらず母はうちに泊まりに来ることは無く相変わらずホテルを使い、他にうちに泊まるような客もないため、折角の高級布団は時々思い出したように押入れから出して湿気を逃がすため日に当てられる程度で、実際には一度も使われたことが無いのだ。
ずっともったいないと思っていた。
アコの布団にしようかと思ったこともあったのだが、彼女は僕の布団で一緒に寝るから必要ないし、そもそも僕の寝室は狭く、二組も布団を敷く余裕はない。
かといって下取りに出すのも、初めて買った高価な嗜好品だから、何となく気が進まなかったのだ。
そのうち万年床にしている僕の布団がいよいよダメになったら、替えにすればいいかと思っていた。
それも何年先の話だか、と言う所なのだが。
高価なだけあって、物持ちが良いのだ。
僕の使っている方は万年床にしてしまっているが、新品の時に比べ多少ボリュームが落ちたかな程度で、まだまだ使えそうだったりする。
この前の大掃除でついでに布団も干されており、万年床だった布団は完全に復活とまではいかないがかなりふわふわになっていた。
元々カバーはしっかりかけて使っていたし、僕の部屋はあまり湿気が籠らないこともあり、毎日使っているにしては状態が良いのだ。
当分予備の出番がない事は明らかだった。
寧ろ、仕舞いこんでいる予備の布団の方が湿気やカビでダメになる恐れすらある。
急遽決まった同居だったが、彼女が布団を使ってくれれば僕の心に引っかかっていたもやもやは一つ減るのだ。


「わかりました、わかりましたよぅ!」


早口の僕に気圧されたのか、アコはもういいと両手を顔の前で左右に振りながら、「じゃあ布団を敷きましょう」と言った。
僕はよっしゃ!と小脇に拳を握った。
早く布団を宇宙人に見せたいのだ。


「布団は押入れですね、先にお部屋を片付けちゃわないと」


やることが決まれば僕よりもアコの方が動くのが早い。
台所に掛けてあったエプロンを手に取り、足はすでに和室へと向いている。
まだ僕は何も言っていないが、布団のある場所はわかっているようだ。
きっと片付けをした時に確認したのだろう。
頼もしい嫁だ。


「邪魔になるものをこっちに出せばなんとかなるよな、ある程度はアコがまとめてくれてるからさ。
重いだろうから運ぶのは僕がやるよ」


僕はアコの後に続いた。
ここは男の僕の出番だろう。


「私は何をすれば良いでしょうか」

「ええと、そうだな・・・
いや、取りあえず座ってて」


僕らの後を付いて来ようとした宇宙人だったが、僕の指示を受けて大人しくソファに腰を下ろした。

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