トップページ > もくじ > とりあえず聞いてみる

連続小説

とりあえず聞いてみる

「ああ、これですか」


自分の鼻を捏ね回しながら、宇宙人はさも意外というふうに言った。
その様子からも、それがアコのせいではないことはなんとなくわかった。
宇宙人は自分で自分の鼻の状態を知っていたのだ。


「貴方のせいではありませんよ。
これはもう随分前に、どうしてここのパーツは動かないのだろうと思って色々していたらこうなってしまいまして、もうどうにもならないのです。
こうして形を整えれば違和感はないので」


指で扱くようにして鼻先の形を作り、宇宙人の鼻は赤みは増したものの形は元通り、よりもほんの少し高く整えられる。
色々って、何をしたんだろう。
聞きたいような、怖いような、でもきっとその色々の慣れの果てがあの身体なのだろうということは容易に想像ができた。
おそらく、あの鼻は身体のように液化する前の段階なのだ。
そんなものをあんなにいじくりまわしていいのだろうか。
手で触るくらいではどうにもならないのかもしれないけれど、見ていて不安になる。
宇宙人の手付きが結構雑なのだ。
本人は慣れているのかもしれないが、もう少し優しくそっと触った方がいいんじゃないかと僕はハラハラしながらその鼻を見ていた。


「え、じゃあ痛くないんですか?」


アコは顔を手で覆ったまま、指の隙間から宇宙人を見た。
宇宙人は深く頷いた。


「痛くないですよ。
そもそもこの身体には痛覚がありませんので。
そんなことよりも、結局今日からここに住むということでいいのでしょうか」


突然話を戻され、僕は狼狽える。
宇宙人はどちらかと言えばこちらのペースに流されるままだと思っていたのだが、どうやら意外と乗り気のように見える。
痛覚の件を詳しく聞きたい気持ちはあったが、僕はとりあえず質問に答えることにした。
痛覚の件はそのうち聞けばいいだろう。
一緒に暮らすのだから、機会はいくらでもあるはずだ。


「え?
ああ、えっと、そうだな。
すぐ部屋を空けるのは無理だけど、取りあえず移動できるものは移動して布団を敷くスペースだけ空けて・・・
それでいいか?」

「わざわざそんなことをしていただかなくても大丈夫ですよ。
この辺に身体だけ置かせてもらえれば、睡眠はUFOで摂りますので」


そう言えばこの宇宙人は肉体を持たない系の宇宙人だった。
やけに小さいUFOだとは思っていたが、身体ごと入るわけではないらしい。
置かせてもらうってことは、身体と精神部分を切り離すってことだろう。
もしかして、そうしないと睡眠が取れないのだろうか。
僕的には、やはりせっかく一緒に暮らすならしっかり布団で休んでもらいたいという気持ちはあって、でももし布団なんて必要ないというなら強要するのもどうかとは思うのだ。
僕はとりあえず聞いてみる。


「睡眠ってUFOの方がいいとか?
その身体のままだと不都合なのかな、こっちとしてはよかったら布団で寝てもらいたいんだけど」

<< 助け船          人生半分くらい損してるよ >>
トップページへ

PAGE TOP