連続小説

私も

「あ、すみません。
持っていたのを忘れていました」


宇宙人は布団に突っ伏した顔を少し上げて、僕に言った。
いいよと答えて僕は元の場所に戻る。
中のサラダパスタは多少崩れてしまったが、漏れてはいないようだ。
宇宙人が選んだ炭酸の飲料は今すぐには開けない方がいいだろうが。
僕は自分のお茶だけ袋から出し、残りはアコに渡して冷蔵庫に入れるよう言った。


「後で食べるんですか?」

「いや、それは宇宙人の」

「え、宇宙人さん、食事するんですか?
いいなぁ」


アコは冷蔵庫を開けて袋からサラダパスタを取り出しながら、「こんなお洒落なものを・・・!」と呟いた。


「それだけじゃないぞ。
あいつ、コンビニでバイトまでしてるんだって」

「え!?
宇宙人さん、働いているんですか!?」


冷蔵庫から戻ったアコに僕はさっき知った驚愕の事実を教える。
アコもこれには驚いたようだ。
無理もない、だって身体がラブドールの宇宙人が人間社会に混じって働いているなんて驚かないわけがない。


「びっくりだよなー」

「そうですねぇ・・・
働けるんですね、宇宙人でも。
その、私もそうですけど宇宙人さんも社会的にはいない存在ですよね。
色々と手続きとか大丈夫なのでしょうか?」

「そういえば、そうだな」


僕はハッとする。
言われてみると確かにそうだ。
コンビニは手軽に働ける場所かもしれないが、それでも色々と手続きがある。
住所や名前なんかを誤魔化したとしても、給与を受け取るには銀行口座が必要で、その銀行口座もなんやかんやの手続きが必要なのだ。
宇宙人にそんなことができるだろうか。


「その辺は大丈夫です。
これが自動でやってくれますので」


布団に突っ伏したまま話を聞いていた宇宙人が答えると、何処からか現れた例の発光体が返事をするように輝いた。


「何でもできるな、それ」

「私たちが新しい星で生活するための必需品です」


僕はなるほど、と頷いた。
映画なんかでは協力者がいたりして新しい環境のことをあれこれ教えたりするが、それがないとしたらそういう物が必要なのだろう。
協力者よりもよっぽど便利だと思う。
それに反応したのは僕よりもアコだった。


「それを使ったら、私も外で働けますか?」

「その身体では無理ですが」

「それはわかってます!
もしお外に出られるようになったら、ですよ」

「それでしたら可能です。
新しい情報を作ればいいだけですから」


宇宙人の答えにアコは歓喜する。


「アコ、外で働きたいの?」

「もちろんです!
お金を稼げばご主人様に楽をさせてあげられますからね!」


それを聞いて僕は思い出す。
そう言えば昔、仕事が忙しすぎて少々精神を病んでおり、アコに言ったことがあるのだ。
「ヒモになりたい」と。
まあ当時は相手もいなかったし、あれは究極の甘えというか願望というかほぼほぼ冗談だったのだが。
今こうしてアコと生活していて思うのは、真逆のことである。


「僕としては、アコには家にいて家事をしたりしていてほしいんだけどなぁ」


それを聞いたアコは意外そうに、「えーっ」と言った。

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