さよならアコ

自分の意識

「えっ?」

「えっ」


アコから驚いた声が発され、僕も思わず釣られた。


「いやいや、ご主人様ったらー」


冗談だと思ったのか、アコが笑いながら顔の横で手のひらを振った。

どういうことなのだろう。

アコの反応から察するに、彼女が裸エプロンの状態にあるのは僕が関係しているようだ。
だがしかし、まったく覚えがない。

朝起きた時にはアコはもうその状態だったわけだし、そうするように命じた覚えはない。


「えっ」


「えっ?」


今度は僕が先で、後にアコが続いた。
お互い状況が飲み込めず、顔を見合わせる。
漫画なら頭の上や背景にクエスチョンマークが浮かんでいるだろう。


「もしかして、本当に覚えてないんですか・・・?」


場の空気を切り開いたのはアコだった。
僕はそれに頷く。


「ご主人様が着せたんじゃないですかぁ!」

「えっ!?」


それは意外や意外、予想もしていなかった。
しかし、アコがそう言うならそうなのだろう。
着せられた本人がそう言うのだ。

僕は腕を組んで、記憶の細い糸を手繰った。

朝の時点でアコは既に裸エプロンだった。
ということはそれ以前だろう。

もしかしたら寝惚けて命じた可能性はあるが、アコいわく着せたということなので自分から着たわけではなく僕に着せられたのだろう。
寝惚けて起き上がり、アコを着せ替えるなんて事があるだろうか。

さすがにそれはない。

ラブドールの着せ替えは寝惚け眼で行えるようなものじゃない。
エプロンを着ける自体は難しいことではないが、そのためには着ていたものを脱がせる必要があるのだ。
力任せにやろうものなら服かアコの体に痕跡が残っているだろう。
それに、アコのエプロンのリボン結びはループが立体的にふっくらとしていて完璧で、寝ながらこんなにしっかりとしたリボン結びなんてそんな器用な真似ができるわけがないのだ。

ならば、事件が起きたのは寝る前、まだ意識がはっきりとしているうちだろう。

僕は寝る前のことを思い出す。

いつも通りシャワーを浴びて、寝室に来た。
僕は大体寝る前にアコを抱くのだが、その時にその日の気分に合わせてアコの服を変えることがある。

昨日はアコはTシャツにスカートというカジュアルな服装だったのだが、僕の気分はドジなメイドさんにいやらしいお仕置きするだったため、それらをすべて取り払いメイドセットからエプロンだけを拝借し、羞恥プレイに興じたのだった。


「ああ」


僕は思い出した。


「僕が着せたんだ」

「そうですよぉ」


心なしかアコの頬が紅潮したように見えた。


「なんか、ごめん」


僕は恥ずかしいような情けないような、何とも言えない気持ちになった。
寝室での出来事とはいえ、僕の趣味が人に知られるというのはなぜか妙に恥ずかしいものがある。
しかもその影響で、アコが一日裸エプロンだったのだ。
申し訳ないことこの上ない。

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